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はじめに

2016年6月23日に英国が欧州連合(EU)から離脱(EU離脱)することが国民投票で決定してから3年半以上の時を経て、英国の欧州連合離脱協定案が欧州議会にて承認され、2020年1月31日午後11時(GMT)、英国はEUから離脱しました。

欧州連合離脱協定では、2020年12月31日までの移行期間が設けられ、移行期間中は、法律や法的実務に変更はありません。EU法やEU傘下の知財システムは、移行期間終了まで、これまでと変わらず英国にて効力があります。

欧州連合離脱協定では、移行期間終了後も、知的財産権の所有者に対し、その権利は保障されると規定されています。

英国のEU離脱に伴い、知財の観点から押さえておくべきポイントと、各知財制度に関する留意点を、以下に説明します。


ポイント

  • 欧州特許はEU離脱の影響を受けません。
  • 欧州連合商標(EUTM)、登録共同体意匠(RCD)、共同体植物育成権(CPBR)、地理的表示(GI)登録制度、補完的保護証明(SPC)は、EU離脱の影響を受けます。
  • EU制度下で取得可能な権利(EUTM、RCD、CPBR)については、移行期間中である現時点で英国およびEU両方に出願する必要はありません。例外として、権利の無効化手続(異議申立等)がされることが予想される、あるいは英国における早期権利化が必要といった、特別な理由があれば、英国出願も検討すべきです。
  • 英国およびEU両方で商標権を有する場合には、英国商標権をEUTMに統合して(先行権)英国商標権を放棄するのではなく、英国商標権を更新すべきです。
  • 係属中のEUTMの異議申立や無効審判を確認しましょう。英国の権利のみに基づきなされたものである場合、EUIPOは移行期間終了にこれらの手続を却下するからです。
  • 偽造防止プログラムの確認、特にEUおよび英国での通関通知の提出を検討しましょう。
  • 契約書の内容を確認しましょう。領土、準拠法および管轄をEUとしている場合には、英国を含めるために修正する必要があります。
  • 知財管理システムが新しい番号システムに対応しているかどうか、更新期限の通知が正しくなされるかを確認しましょう。
  • EU制度下で取得可能な権利について英国代理人に委任している場合、EU離脱後もEUIPOに対して代理人として引き続き業務遂行可能か否かを確認しましょう。


各知財制度に関する留意点


1. 特許


1-1.
欧州の特許は影響を受けず

欧州特許庁(EPO)および欧州特許条約(EPC)は、EUとは無関係の機関および条約です。英国での特許は、国内ルートと欧州特許庁(EPO)を介したEPルートのいずれかで取得でき、これは英国のEU離脱後も変わりません。なお、特許協力条約(PCT)にも影響はありません。PCT出願からは引き続き、英国への国内移行とEPへの域内移行を経て、英国にて特許権を取得することができます。

EPOから許可された欧州特許は、英国でも有効であり、現在は英国の裁判所でも執行力を有する。ただし、欧州経済領域(EEA)内で特許権者の同意を得た一次販売による消尽を統制する規則は、今後変更される可能性があります。


1-2. EPO
における代理も影響を受けず

英国を拠点とする欧州特許弁理士は引き続き、EPOに対して代理人業務を行うことができます。


1-3.
欧州単一特許(EUP)および統一特許裁判所(UPC)

欧州単一特許(Unitary Patent (EUP))および統一特許裁判所(Unified Patent Court (UPC))は、EU加盟国のみが利用できる制度・機関です。英国はUPC協定の必須批准国3ヶ国のうちの1つ(他2ヶ国はフランスとドイツで、フランスは批准済)であり、2018年4月にUPC協定を批准しましたが、ドイツ連邦憲法裁判所でのUPC法制に関する訴訟が係属中であり、本稿執筆の時点でEUPおよびUPCの先行き自体が不透明です。

EPOは、当該訴訟の担当裁判官から、判決がなされるのが2020年第1四半期であろうとの情報を得ています。判決により、ドイツの批准に問題がないことが明らかになり、ドイツが批准すれば、EPOは、2020年末には、EUPの運用を開始したいと表明しています。

英国がEUを離脱した今、英国がEUPおよびUPCに参加できるのか、ロンドンに設置が予定されるUPCの中央部は廃止されるのか、等は不透明であり、今後決定されていくことになります。


2. 欧州連合商標(EUTM)
、登録共同体意匠(RCD)および共同体植物育成権(CPBR)

欧州連合商標(EU Trade Mark (EUTM))および共同体意匠(Registered Community Design (RCD))の登録機関である欧州連合知的財産庁(European Union Intellectual Property Office (EUIPO))は、EUの専門機関の一つです。共同体植物育成権(Community Plant Variety Right (CPBR))の登録機関である共同体植物品種庁(Community Plant Variety Office (CPVO))もまた、EUの専門機関の一つです。したがって、移行期間終了後は、これらの制度を利用した英国での権利取得はできなくなります。

移行期間終了時に存続しているEUTM、RCDおよびCPBRの権利については、当該権利の権利者には、英国の同等の権利が自動的に付与されます(手続や手数料納付等一切不要)。英国政府は、移行期間終了後の2021年1月1日に、英国商標権および英国意匠権を付与すると表明しています。例えば、移行期限終了時に10のEUTMを保有する場合、2021年1月1日から10の英国商標権およびEU加盟国27ヶ国で有効な10のEUTMを保有することになります。英国にて自動的に付与されたこれらの同等の権利は、元のEUTM/RCD/CPBRの出願日、優先日および先行権(seniority)発生日を有し、最初の更新日も元のEUTM/RCD/CPBRと同日となります。

移行期間終了時に係属中の手続の結果、EUTM/RCD/CPRBが無効となった場合、英国で付与された同等の権利もまた(無効理由が英国で適用される場合には)無効となります。

EUTM/RCD/CPBRについては、EUまたはEEA圏内の住所が必要であるところ、自動的に付与された英国の各権利について、移行期間終了から少なくとも3年間は、英国の住所が不要です。その後、英国の各権利について英国の住所が必要となるか否かについては、今後の決定事項です。

移行期間終了時に係属中のEUTM/RCD/CPRB出願は、移行期間終了から9ヶ月以内に英国において再出願すれば、EUTM/RCD/CPRBの出願日、優先日および先行権発生日が適用される英国国内出願として扱われます。再出願には、通常の願書の提出および手数料の納付が必要です。

EU離脱後にEUTMに基づき自動的に付与された英国商標権には、頭にUK0009が、RCDに基づき自動的に付与された英国意匠権には、13桁のRCD番号の頭に9が付されます。


2-1.
国際意匠・商標登録

ハーグ制度・マドリッド制度に基づきEUを指定した国際登録についても、英国政府は、英国でのこれらの権利の保護を保障しています。すなわち、上述のRCDおよびEUTMと同様に、英国の同等の権利が自動的に付与されます。

英国は、ハーグ協定およびマドリッド協定議定書の締約国です。したがって、ハーグ制度・マドリッド制度を利用した英国における意匠権・商標権の取得が可能です。


2-2.
意匠

非登録共同体意匠の所有者は、英国の同等の非登録意匠の所有者となります。


2-2.
商標

EUTMの欧州連合加盟国の27ヶ国での真正な使用は、EUTMに基づき自動的に付与された英国商標権の有効性を支持するものとして認められます。したがって、英国において移行期間終了から5年以上使用していない商標でも、直ちに不使用により取消されるわけではありません。

移行期間終了前の英国でのEUTMの使用は、EU加盟国27ヶ国におけるEUTMの不使用取消審判に対抗するための使用として認められます。


3. EU
の地理的表示(GI)保護

EUの地理的表示(Geographical Indication (GI))登録制度は、EU規則に基づいて制定された制度であるから、EU離脱後の英国には適用されません。

本稿執筆時点で、英国にはGI登録制度はありませんが、英国政府は、移行期間終了までに英国のGI登録制度を確立させる予定です。

EU GIの権利者には、同等のUK GI権が付与されます。


4. 補完的保護証明(SPC)

補完的保護証明(Supplementary Protection Certificates (SPC))もEUの制度です。

移行期間終了時に係属中のSCP申請は、引き続き現制度の下で審査されます。したがって、再申請は不要です。

既存のSPCについては、移行期間終了後も引き続き有効です。

移行期間終了後の英国におけるSPC申請は、これまでと同様に英国知的財産庁に行います。必要書類等に変更はありません。


最後に

英国政府は、EU離脱の知財権利者への影響を最小限に抑えるべく努力していますが、EU傘下の知財制度を利用していた出願・権利については、影響が避けられません。不明な点があれば、私共までご連絡ください。



武田 恵枝

化学および材料特許チームに所属し、特に工業化学、医薬品、繊維、食品飲料およびバイオテクノロジー分野での経験が豊富である。さらに、日本国商標法およびマドリッド協定議定書の制度の下での商標実務においても豊富な経験を持つ。日本国意匠法の下での意匠実務の経験も持つ。

Email: satoe.takeda@mewburn.com

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